第14回 在宅医療推進情報交換会を開催いたしました
令和4年12月14日
 

本庄先生より、開催の挨拶
今回14回となる在宅医療推進情報交換会は、施設の内容を中心に話を進めていきたいと思います。コロナ禍の中のこの3年間でこれまで積み上げてきた取り組みの預金が崩されてきたと感じています。コロナ禍対策で我慢を重ねていた中国国内の状況と同じように、施設においても面会や行動の制限等、限界にきているのではと思います。
特に高齢者における1~2年は大切な時間で、制限によりかなりのマイナスとなります。今回は出来るだけ高齢者施設や訪問看護ステーションと日頃の課題をディスカッション出来たらと思います。

1,各病院からの状況報告
<済生会泉尾病院>
令和4年10月1日より、初診時選定療養費を開始し、紹介状を持参して頂くことを推進すると共に、逆紹介について院内にポスターを掲示し病診連携を強化する取組を説明
コロナ対応については、発熱外来は完全予約制で対応し、コロナ病床は現在18床あり、6月25日~11月30日のコロナ入院患者へのウイルス治療薬使用状況の報告がありました。
また、関連施設でクラスターが発生した際、ゾーニングをすることにより対応する事により、職員や物品の交差を避けることが可能になり、職員を含め感染者の増加を抑えることができたことを発表

 <大正病院>
コロナ状況について、院内でのクラスター発生から収束までの経緯について説明8月9日に3名の患者が発生したことに始まり9月9日に1名の方が感染したのを最後に9月17日に隔離解除となった。合計17名の方が感染した。1例の方は前立腺癌が原因で亡くなられ、もう1名の方が重症化し、指定病院へ転院、回復した。それ以外の方は、重症化なく回復した。この間の状況として、入院患者の受け入れ中止と院内の患者移動を停止にしたこと、その辺から入院患者数も大分減少したことがあり、まだ復活出来ていない状況にある。
次に、院内の発熱外来の状況について説明し、大阪市の陽性率38.9%に対し、大正病院では65.5%だった。感染者数の推移では、大阪府の発生数と多少リンクしていると考えられる。

 <ほくとクリニック>
医療福祉相談室長が藤本氏から森田氏に変更
入院受け入れ時には、全員PCR検査実施し、身体症状がある場合は精神科単科で対応可能か評価しその後の受け入れになる。状態により受け入れが検討となる場合もある。
退院については、事前の家族指導や外泊支援、家族や関係者からの面談が出来ずに退院促進に遅れがある印象がある。今までは面談をすることでキャッチ出来た患者の状態が、キャッチ出来ずに退院支援の方向性が変わることがある。
開業医や訪看に望むこととして、患者が不眠等の訴えで、内科を受診することがある。気分の落ち込みや普段と違った様子があれば、気軽に受診を勧めて欲しい。予約なしで外来受診しやすくしているので困り切ってしまう前に相談して欲しい。施設に望むことは、施設で対応にご苦労されてどうしようもない時に来ることがあるが、外来は気軽に受診できるようにしているので早い段階で相談して頂ければと思う。施設からの入院は基本的に施設に戻ることを前提にお願いしたい。

<多根病院>
4月から10月の内科外来患者数が増加した。発熱外来からの紹介で患者数が増えたことが要因と考えられる。また、救急搬送も増加した。近隣医療機関でコロナ対応による入院制限があったことが考えられる。外来では、今年7月より脳血管内治療科を開設、また消化器内科においてもレディース内視鏡、低侵襲治療癌、胆膵内視鏡外来等、専門性を高めている。

2.大正区在宅医療。介護連携相談支援室よりの情報提供
大正区内施設状況について、各施設別役割分担について
施設より病院へ、コロナ患者や他救急患者を積極的に受け入れて下さり有難いとメッセージを頂いている。

3.診療所の状況について
<樫原クリニック>
在宅患者数は殆ど変わりない。緊急往診依頼数は最近少ない。受け入れはいつでも可能

<柿原医院>
老人ホーム、グループホームで15名、在宅で10名の患者を担当
在宅患者の受け入れにまだ余裕はあり
発熱外来は平日、日曜日も対応し、年末年始期間も殆ど受け入れ可能

<結新会ホームケア鈴木クリニック>
往診専門で、現在、在宅患者120名、うち施設10名程度担当
状態が悪い方を紹介が多く、月5名程度の看取りケースがある
住之江、西成、南港の患者も増えており、医師2名で回っている。
昨年は、年末に自宅に帰りたい等での駆け込み依頼があった。その辺も出来るだけ対応していきたい。
在宅や病院の医療関係者へ、新規依頼の場合に状態を細かく聞くことがあるが、ご協力頂きたい。すぐに対応したいが、準備が整わずタイムラグを要することがある。ご理解頂きたい。

<ほんしょう内科クリニック>
看取りは5~10名程度、往診患者は30~40名程度で、まだ少し余裕があり、基本的にご紹介頂いた受け入れる姿勢でやっている。
在宅医だけが聞くことができる細かい情報を入院時に病院の医療職と共有できたらいい。

4.訪問看護状況報告
<エキスパートナース訪問看護ステーション>
利用者数140名程度、年間看取り数は22名で月毎に波があり、ターミナル患者がいない場合もある。新規利用者数は月平均7名程度あり、終了者も同程度数あり
看護師は非常勤含め9名、理学療法士4名で対応
利用者の出入りが多いため余裕あり、受け入れ可能
コロナ状況は、利用者本人や家族にパラパラで発生あり、PPEで訪問し出来るだけ荷物を最小限にしているが冬場は上着等荷物が嵩む事、PPE着脱スペースがない居宅もあり、今後どうしていくかを考えている。

<訪問看護ステーションさくら通り サテライト そよかぜ>
4月から法人内のステーションで大正、西成、港区が統合され、大正区はサテライトになっている。利用者数は約70名、大正区を中心に西成区も訪問
現在、ターミナルの方は2名で年末年始は交代で訪問予定
看護師3名、理学療法士2名で対応
今後の課題として、終末期を在宅方向に本人と医師と取り決めていたケースが、急変時に
訪問介護スタッフにより救急要請し在宅看取りが出来なかったケースがあった。退院した時点で関係者全員での認識統一する必要があった。

<訪問看護ステーションmusubi大正>
常勤看護師6名、理学療法士2名、作業療法士1名の計9名
在宅看取りが月平均1~2名、新規利用者数5名程度、利用者数70~80名
コロナ感染者が広がっている感じはない

5.入退院についての困りごとと応答
(1)病院から
・入院を機に在宅が無理と言われる家族にどのように話をすれば、在宅への退院を勧めることが出来るか
→本庄医師より、本人が自宅に帰りたいと望んでも家族の不安が大きく無理と言う場合は、在宅医も含め一緒に相談していくことで解決することもある。難しいケースがある場合、一度、在宅医との相談を提案してもらう方法もある。

・嚥下が困難な患者が入院した時に、自宅で工夫している嚥下方法を知らせて欲しい
→本庄医師より、在宅医と相談して頂ければうまくいくこともある。考えすぎずに退院して頂ければよいのでは

・入院患者が単身でキーパーソンがいない方で意思決定も難しい場合、他の病院ではどうしているのか?ケアマネージャーがいる場合に協力して貰うことがあるが、ケアマネージャーの業務ではないと言われることもある。
→済生会泉尾病院の場合は、倫理カンファがあり、その中でその方の今までの生きざま  
をチームで考え方向性を決めていく。倫理カンファについては、公認の臨床心理士1名を配置し、第3金曜日に定期的に開催し、それ以外も必要時は開催している。
→ケアマネージャー協会より
ケアマネージャーの業務ではないと言うのは確かだが、知りませんと言うのは違う。入院することも想定して、あらかじめ後見人を付けておくことも必要
病院相談員とケアマネージャーとの意見交換会も必要かと思う。今後、機会を設けていきたい。
→本庄医師より
情報を持っている人が話し合いの場に参加していくことが必要

・施設入所の方が入院された場合、退院時の施設の受け入れに時間を要すことがある。
→特養幸楽園より
車の運転ができるスタッフがいない、家族との連絡がすぐにとれない時に受け入れに時間を要すことがある。今後は、すぐの対応が出来るようにしていきたい。
→老健エバーグリーンより
相談員総替え状態で、不慣れな状態で病院との連携に対応が遅れている状況がある。
→本庄医師より
職員の入れ替わり等、施設のみならず病院でもありうる。お互いの状況を知ることで連携が図れる。

(2)訪問看護ステーションから
・救急搬送の際に、患者の状態や情報伝達のために付き添う場合があるが、病院で長時間の滞在を要請される場合がある。次の訪問時間もあり困っている。
→済生会泉尾病院より
同様のケースで病院現場看護師からも相談あり。受け入れ側は、普段の日常の様子の情報が欲しい。その場合、どう対応していくのか今後検討していく
→大正病院より
現状、情報が全くない状態での受け入れは難しく、患者の背景を知りたい
対応についてはケースbyケースだが、今後善処していきたい

(3)施設から病院へ
・入所者の急な体調変化で受診した場合に、夜20時頃に入院の必要がないため迎えに来て欲しいと連絡が来ることがあった。送迎できるスタッフもおらず、夕食もない状態になっており受け入れ対応に困ったことがあった。
→病院より、採血やCTの結果が出るまでに時間を要す場合もある。夕食準備ができないだけで1泊入院となるのもおかしい。また、夕食準備が出来ないのは入院した場合も同じ状況。体調不良時は早めに受診して頂くことが望ましい。

(4)病院から施設へ
・施設から入院した方で入院期間が長くかかる場合もある。どのくらいを目標にすれば受け入れ可能か
→大正園は、3か月が在籍基準のため、そこを目標にして欲しい
→老健あいの里 老健のため、入所した時点で退所扱いになる

6.各施設から状況と今会議参加の感想
送迎出来るスタッフがいない場合に退院時の対応が遅れる。
職員の退職が多く、入退院時の対応も不慣れで利用者数も減少している。
ショートステイ利用者からクラスターを発生し、受け入れに対し職員のジレンマがある。
老健は在宅復帰を目的とした施設であるが、コロナ禍の中、入所期間が長引き体調を崩される方も多く、本来の目的を果たせない。等、施設様々な状況について話があったが、参加全施設から今回の会議での意見を参考に今後に生かして行きたいという感想があった。

7.おわりに
大正病院 福本先生より
現在、訪問診療を中心に回っています。訪問看護や訪問リハビリもお世話になっています。
今後もよろしくお願いします。

まとめ 
樫原先生より
施設や病院等、いろいろな立場のいろいろな話が聞けた。特にほくとクリニックの山本先生の丁寧な話が分かりやすかった。施設のエバーグリーンやビーナスホームの空きが多い状況は大変だなという印象でした。いろいろ参考になりました。

大正区在宅医療・介護連携相談支援室 山本 美幸